人間の運命と科学

著者:長谷川英祐

 前置き:

現代文で学ぶことは大きく分けて二つ。二項対立(論理構造)と、抽象的思考と具体例の識別です。

 現代文では今と昔、日本と海外、一般論と筆者の持論というように、対比軸をもって物事を論じています。これを二項対立といい、何と何を対比しているのか、筆者の意見の根拠は何か、論理構造を考えることが大事です。

 また、筆者は抽象的な持論を持っており、その持論を具体例で補強しています。筆者は結局何が言いたいのか。抽象的思考と具体例を識別できるようになりましょう。

 さて、今回の「人間の運命と科学」では大筋から外れた具体例が非常に多く、筆者が何を言いたいのかわからず迷子になりがちです。論拠に関係ない具体例を見分けて適当に読み飛ばすという技術を意識しながら読んでいきましょう。

要約文

第一段落: 科学が発達しても、最終的には「人間とは何か」を考えなければいけない。

🐿の補足: 冒頭で述べたように、この話は大筋から離れた具体例が長く続くので、読んでいて何の話をしているのかわからなくなってしまいます。しかし筆者の言いたいことはこの一文に詰まっています。これを忘れず次の段落に進みましょう。


第二段落: 人間とは何か① 人間は自意識を自分の利益を守って生き抜くために進化させてきた。

  対比: 動物のもつ自意識、SFで扱われる一つの巨大な知的生命体が持つ自意識。それらと比べても人間の自意識はやはり特殊なものだ。人間はとにかく「考える」。


第三段落: 人間とは何か② 人間は生存に必須ではない「無駄」を大事にする。これが他の動物と違う点だ。

  対比: 動物は文化や「無駄」を持たず、その活動は全て生存や繁殖に繋がっている。

🐿の補足: 生きるため、自分の種を残すためが生物として一番大事なことならば、少子化なんてとんでもない時代ですね。単に子供を残すよりも大事なことがあるとみんなが結論付けた結果がこの時代なのですが、どうしてそんな「無駄」を大事にするのでしょうか。


第四段落: なぜ無駄があるのか。科学技術を用いてすぐ先の利益を最大化するのは可能だが、それを選択すると長期的な存続が不可能になってしまう。「何のために科学を使って欲望を叶えるのか」、それを考えるために自意識や「無駄」があるのではないか。

 具体例: すぐ先の利益の最大化は可能だが、長期的に見ると利益が薄い具体例→武器の発明や公害、原発。

🐿の補足: 自意識も無駄も長期的に見ると、種の存続に必要なものなのです。自意識と無駄がなければ、人間は基本的に賢いので欲望に向かって突っ走って実現させてしまいます。その結果戦争や環境問題を引き起こしてしまうのです。それを防ぐためには、考えて考えて無駄な行動をとって人間の進歩の足を止めなければなりません。ゆっくりゆっくり進歩するぐらいでちょうどいいんじゃないか?って話です。


どんな話か理解できたでしょうか?

 個人的には、当たり前の話すぎてあまり好きではないです。まあ、企業に就職して実験やものづくりしてると、「何のために」などどうでもよくなり、企業の利益最優先で動いちゃいますからね。やってることが楽しくて、いつの間にか僕たちは原爆を作っていた、なんてのは意外とよくある話なんじゃないかと。

🐿もエンジニア見習いとしてハッキングの勉強をしてますが、プログラミングで動くことそのものが楽しくて、ついうっかり犯罪に手を染めてた。なんてことまではさすがにありませんが、目的を忘れて技術に没頭してしまうことはよくあります。いや、だって、ただの人間がダイナマイト作ったりハッキングしたりできるって、なんの役にも立たなくても、それだけでわくわくしません? 

特に理系で将来ものづくりに携わる人たちは、「何のために」を常に考えてねって話です。

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