「である」ことと「する」こと

著者:丸山真男

 前置き:

現代文で学ぶことは大きく分けて二つ。二項対立(論理構造)と、抽象的思考と具体例の識別です。

 現代文では今と昔、日本と海外、一般論と筆者の持論というように、対比軸をもって物事を論じています。これを二項対立といい、何と何を対比しているのか、筆者の意見の根拠は何か、論理構造を考えることが大事です。

 また、筆者は抽象的な持論を持っており、その持論を具体例で補強しています。筆者は結局何が言いたいのか。抽象的思考と具体例を識別できるようになりましょう。

 さて、今回の「『である』ことと『する』こと」では『である』と『する』は具体的に何を表しているのかを抑えつつ、筆者がその対比で何を言いたいのかをまとめましょう。

要約文

第一段落: 権利はそれを使い続けないと、いつの間にかなくなってしまう。

🐿の補足: よく年配の方々が呟かれる「今の世は昔と比べていいねえ」。確かに昔と比べて当たり前のものって探せば沢山あります。誰でも選挙に参加できる参政権(民主主義)。男女平等に教育を受ける権利。ホワイトな八時間労働。自由に自分の考えを呟けるネット環境(表現の自由)。戦争も銃もない平和な世界。

 これらはまさしく私たちが行使できる権利。でも、当たり前になりすぎて権利を使うことを忘れていたら、いつの間にか奪われてしまうものなんです。


第二段落: 権利は行動することによって守られる。

🐿の補足: 「選挙に行っても何も変わらないから」じゃなくても、できる行動はいっぱいあるはずです。不当な差別を感じたらSNSに書いて人々に訴える。ホワイトな労働環境が欲しかったら法律を勉強する。年金制度に不安を感じたら対策を考える。大事なことだからもう一度。変えようと行動し続けないと、権利はいつのまにか奪われてしまいます。


第三段落: 「である」は存在を重視する考えであり、「する」はその人がやってきた実績を重視する考え方。

 具体例: 「である」:身分制度。役職。先輩、上司というだけで敬えという価値観。 文化、学問。花

      「する」 :政治や経済、仕事で「できる」ことでの役割分担。果実

🐿の補足: 役にたつか立たないか、という方向で考えてみても面白いのでは? 世の中で流行する歌や小説、極論を言えば恋人や友人という存在は、ただ生きる上ではなんの役にも立たない代物ですが、人々はその存在(である)だけで敬意を払います。同様に役に立たないとみなす学問分野でもそこから学べる思考力、人間力、モラル、多様な価値観はそれだけですばらしいものです。ついつい「する」を重視してしまいがちですが、どちらも私たち人間生活になくてはならない価値観なのです。


第四段落: 問題は「である」が必要な局面と「する」が必要な局面が入れ替わってしまうことなのだ

 具体例:「である」が必要な局面は学問の世界である。実学が叫ばれている現在は「する」の価値観に毒されすぎ。本来学問とは「役にたつ立たない」という価値観ではなく、教養として学ぶべきもの。「する」が必要な局面とは政治経済の世界である。いつのまにか世襲政治と化した日本の政治。「である」の価値観ではなく実力主義の価値観が入るべき。

🐿の補足: 誰もが政治に参加できると法律は言っていますが、今の国会議員見てると親や祖父が政治家だった人が目立ちます。「勉強すれば」誰でもなれる職業ではないんですよね。まさしく身分の「である」の価値観をとった世界です。逆に学問の世界でも古典などが「役に立たない」と批判されがちですが、あれは「する」の価値観で語るべきではありません。自分のルーツ、教養、現代と全く異なる価値観。それだけで価値があるものなのです。

 まとめ: であるの価値(学問や教養)を身につけた人間が行動(する)を起こし続けることが大事。


どんな話か理解できたでしょうか?

 今回は前半の権利と行動の話と、後半のであるとするの話の結びつけが難しかったですね。でもわかってしまえばなるほどと納得できたのではないでしょうか。

 十二国記という不朽の名作シリーズの「図南の翼」という作品に、荒れた自国を救おうと、国王を目指す女の子が登場します。周りは彼女に「どうして王様になりたいの?(あなたがやらなくとも誰か他の人がやるでしょう?)」と聞くのですが、少女は言うのです。

「国民の義務だと思ったからよ!」

あれがいやだこれがだめだ。誰か変えて欲しい。不満を言うだけなのは簡単ですが、その権利を持つのは、実際に変えてみようと努力した人だけではないでしょうか? 

 リスもついったの鍵垢でグチグチしていただけを恥じ入り、自分でも何かやってみようと政治のウェブサイトを作ろうと思いたったことがあります。いくつかの質問に答えていくだけで、あなたの思想に似ている政治家はこの人だからこの人に票を入れましょうってわかるやつ。イメージとしては毎日新聞社の「えらぼーと」に近いです。

https://vote.mainichi.jp/25san/

結局何かしっくりこなくてサイト制作はやめてしまったのですが、「不満を言うくらいなら何かできないか探す」という気持ちは常に持ち続けなければ、と思っています。

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「である」ことと「する」こと” に対して1件のコメントがあります。

  1. shimarisu より:

    授業案:
     今でこそ当たり前になった数々の権利。その権利について気になったものを一つ選び、獲得された過程と、当時の人々がどのような努力をしたか調べレポートにまとめよ。当時の状況や問題点、解決策、実際の効果、現在の状況について客観的に記述すること。

  2. shimarisu より:

    授業案:
    なぜ選挙の投票率は下がり続けるのか。なぜ政治の世界では「である」の価値観がはこびってしまったのか。気になるテーマを自分で決め、調べた上で仮説を立て、解決策まで論述せよ。実行可能性を考えること。

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