「ブーボー」と「マンマ」の記号論

著者:池上嘉彦

 前置き:

現代文で学ぶことは大きく分けて二つ。二項対立(論理構造)と、抽象的思考と具体例の識別です。この技術を使って文章を要約できさえすれば、人生に必要な国語力は十分です。

 現代文では今と昔、日本と海外、一般論と筆者の持論というように、対比軸をもって物事を論じています。これを二項対立といい、何と何を対比しているのか、筆者の意見の根拠は何か、論理構造を考えることが大事です。

 また、筆者は抽象的な持論を持っており、その持論を具体例で補強しています。筆者は結局何が言いたいのか。抽象的思考と具体例を識別できるようになりましょう。

 さて、今回の文章は、現代文の鉄板ネタ、記号論です。言ってることはぱっと見難しげですが、一つ一つ具体例を当てはめることで理解しやすくなります。

要約文:

第一段落: 私たち人間は「言語創生」を日常的に行なっている。私たちが「意味あり」と認めるものは全て「記号」になるのである。その営みが人間の文化を生み出し、維持し、組み替えている。筆者はその営みを「意味づけ」と呼ぶ。

 具体例: 朝の小鳥のさえずり → 楽しい1日の予告という記号

      一枚の落葉 → 天下の秋の記号

🐿の補足: 現代文でいうところの「記号論」ってやつです。記号というと「ー」「+」や「@」「*」、地図記号などを思い浮かべてしまいますが、現代文の「記号」は少し意味が違います。何かの現象に別の情報が入っているもの、それを「記号」と呼びます。

例えば、朝の小鳥のさえずりは単なる小鳥の鳴き声です。しかし私たちは、ドラマや漫画でこの表現を見ると、小鳥の鳴き声以上のもの(楽しい1日の始まり)、という別の情報を想像してしまいます。これこそが記号なのです。


第二段落: 日常的な「意味づけ」は言葉の仕様によって支えられている。私たちは「命名」することで、相手の存在や自分との関連を確認する。命名をすることで、未知のものを自分の文化に組み込み、自分の世界を膨らませ続ける。

 具体例: 自分が飼う犬に「ポチ」と名前をつけた。これは他の犬と区別するためであり、その犬は自分にとって特別な価値をもっているという認識の現れである。

 また、何か他のものに「ブーボー」と名前をつけたとする。「ブーボー」の正体はよくわからないかもしれない。だが、命名したことがすでに、「ブーボー」の存在、自分との関わりを認めたことの証明である。

🐿の補足: 名前をもつこと、それがそのまま自分がこの世の中で価値ある存在であるという証です。身の回りの植物を思い浮かべてください。その植物の名前が思い浮かんだでしょうか? 昔の日本人なら言えたと思います。なぜならそれが食料になっていた、つまり役に立っていた価値あるものだからです。毒草と薬草、食用となる植物を見分けるために、人々は名前をつけ区別しました。名前をつけるのは自分の世界を膨らませる作業なのです。


第三段落: 意味づけは第二段落のような「創造的な」一面だけではない。秩序(イデオロギー)の習得という一面も持つ。

 具体例: 「ママ」が「マンマ」に変わる時、幼児は母親のことを「自分に食べ物を与えてくれる人」と認識し、「食べるもの(マンマ)」とは別の存在だと把握する。

 また、英語では同じ「brother」でも、日本語では「兄」「弟」と区別する。日本ではその区別が重要だという「秩序」があるのだ。

 一つの言語を習得することは、一つの特定の捉え方、「イデオロギー」を身に付けることでもあるのだ。


まとめ: ひとたび身につけた意味づけ(イデオロギー)は、時にそれを身につけた人を捕らえて話さない「牢獄」にもなる。しかし、人間は機械とは違う。決まり切った世界に飽きてしまう人間は遅かれ早かれ、「創造」の欲に駆り立てられる。人間は確かに「記号を使う動物」なのである。

🐿の補足: 本文中の言葉をそのまま使ってみましたが、なんかよくわからないですね。

まずはイデオロギーという言葉から。秩序という言葉で訳されてますが、わかりやすく「常識」と言い換えてもいいと思います。例えば日本のような儒教の影響が強い国では、とかく「目上のもの、年上、父母を理由なく敬え」という常識がかなり根強いです。そのようなイデオロギーの元では、どちらが年上かという情報がかなり重要で、それが同じbrotherでも兄と弟という言葉の違いを生み出します。

しかし、本当にそれでいいのか? 人間は常識に対して疑問を持っちゃう生き物なんですね。「目上はそれだけで偉いのか?」そんな疑問を持った若い人はいつしか「部長」「先生」と役職で呼ぶのをやめ、「○○さん」と呼ぶようになるかもしれません。これが言語創造です。新しい意味を持つ記号を生み出し始めるのです。他にも若者言葉や流行語もこの現象の一つでしょう。

ちょっと具体例が無理やりすぎたかもしれません。自分なりに言語創世の例を考えてみてください。自分ごととして考えることで、より深く理解できますし、記憶も長く保たれます。


どんな話か理解できたでしょうか。

記号論を初めて学んだ時、もし宇宙人が存在して、地球に来訪した時、会話は成り立つのだろうか。と妄想していました。言語が通じない相手、例えばフランスに行って言語が通じなくとも、多分会話は成り立ちます。なんだかんだで同じ人間なので、どんな時に笑って、何をされれば怒るのか、大体はわかります。同じ世界や感覚、秩序を共有している「人類皆兄弟」です。

でも宇宙人はそんな秩序なんて理解しないかもしれない。例えば彼らは虫や植物として生きているかもしれない。ウイルスの姿で思考しているかもしれない。言語以前に交流はできるのか、なんてことを考えていたことを思い出します。

まあどうでもいいことなんですけどね。

というわけで、人間がもつ特殊能力の一つ、「意味づけ」を巡る話でした。

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