消費社会とは何か

著者:國分巧一郎

 前置き:

現代文で学ぶことは大きく分けて二つ。二項対立(論理構造)と、抽象的思考と具体例の識別です。この技術を使って文章を要約できさえすれば、人生に必要な国語力は十分です。

 現代文では今と昔、日本と海外、一般論と筆者の持論というように、対比軸をもって物事を論じています。これを二項対立といい、何と何を対比しているのか、筆者の意見の根拠は何か、論理構造を考えることが大事です。

 また、筆者は抽象的な持論を持っており、その持論を具体例で補強しています。筆者は結局何が言いたいのか。抽象的思考と具体例を識別できるようになりましょう。

 さて、今回の「消費社会とは何か」では「消費」と「浪費」を対比しながら持論を進めています。似たような言葉ですが、どんな違いがあるのかに注目しながら読んでいきましょう。

要約文:

第一段落: 人が豊かに生きるためには「必要」だけではなく、「贅沢」がなければならない。

🐿の補足: 確かに衣食住が足りれば人は生きていけると考えがちです。しかし本当にそうなのか? それを確かめた有名な心理実験があります。とある大学が高額バイトで実験参加者を集めました。実験内容は1日ベッドで寝ているだけ。三食保証されているしトイレもいける。生きるために必要なものは全て揃っている。しかし高額報酬にも関わらず、ほぼ全ての学生が2、3日で投げ出してしまいました。

 ただ食べて寝るだけじゃない「何か」が人生には必要ってことですね。


第二段落: だが、「贅沢を肯定する」というと誤解を招く。そこで、哲学者であるボードリヤールの「浪費と消費」の区別に注目して考えてみたい。

 浪費: 「物」を受け取る。満足できる。食べ物でも服でも受け取ることにいつか限界がくる。

 消費: 「意味」や「概念」を受け取る。物を受け取るわけではないので限界はなく、満足できない。

🐿の補足: 今は「消費社会」であると筆者は述べます。身近な例で言えばインスタ映え(?)などがわかりやすいのではないでしょうか。有名人がインスタに物をアップすれば、それが欲しくなる。その時欲しいのは「物」自身ではなく、「有名人が紹介したものを自分も持っている」という意味なのです。これが「消費」です。物ではないので次から次へと欲望は湧き上がり、いつまでたっても満足に至りません。


第三段落: 消費社会である現代と浪費社会である原初の狩猟民の社会を比べる

  対比: 狩猟民の社会は物を持たず、生産もしない。将来のことを考えて備蓄もしない。

現代人の感覚で見ると彼らは物がなく貧乏かもしれない。しかし実は全く逆で、彼らは自由であり豊かなのだ。

今しか考えないから、今持っているものを自由に浪費することができる。今あるもので満足するから労働時間は1日三時間程度で足りる。狩猟民は「贅沢で豊かな」暮らしをしているのである。


第四段落: 現代は消費社会である。いくら消費しても限界がなく、延々と繰り返される。繰り返されるうちに消費はしだいに過激に、過剰になっていき、ますます満足することがなくなってしまう。現代は「豊かさ」とは程遠い。


どんな話か理解できたでしょうか?

 老子の「足るを知る」という言葉を思い出してしまいます。今あるものを見つけ、感謝をすることで、人は幸せになれるとかそんな意味だった気がします。幸せって一口に言っても抽象的ですよね。「好きな人と結婚」「有名大学に入って一流企業に勤める」「大金持ちになる」「猫を撫でながら穏やかに暮らす」世間一般が思う豊かな人生ってこんなところでしょうか。今だとネットが普及しているので、「SNSで情報発信して影響力を持つ」なんかも人によっては「豊かさ」かもしれませんね。

 でも、そういう豊かさって実はハードルが高いもの。高すぎるハードルでくじけてしまう前に、狩猟民族を見習って「今日も飯がうまい!幸せ!わーい!」が豊かな人生でいいんじゃないかなあって🐿は思うのです。

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消費社会とは何か” に対して1件のコメントがあります。

  1. shimarisu より:

    授業案:
    この話でいう消費の概念を踏まえ、企業や「インフルエンサー」が生み出した「流行」を調べて挙げよ。
    例:バレンタイン、ハローウィンなど

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