ものとことば
著者:鈴木孝夫
前置き:
現代文で学ぶことは大きく分けて二つ。二項対立(論理構造)と、抽象的思考と具体例の識別です。この技術を使って文章を要約できさえすれば、人生に必要な国語力は十分です。
現代文では今と昔、日本と海外、一般論と筆者の持論というように、対比軸をもって物事を論じています。これを二項対立といい、何と何を対比しているのか、筆者の意見の根拠は何か、論理構造を考えることが大事です。
また、筆者は抽象的な持論を持っており、その持論を具体例で補強しています。筆者は結局何が言いたいのか。抽象的思考と具体例を識別できるようになりましょう。
さて、今回の「ものとことば」では言葉の「抽象的思考と具体例の識別」に注目しながら読み進めていきましょう。
要約文:
第一段落: 私たちは数え切れない「もの」・「こと」に囲まれている。
具体例1: 身につけているものとして「洋服」・「セーター」・「ネクタイ」・「ワイシャツ」・「靴下」。
具体例2: 物体の動き、人間の動作にも名前がついている。
具体例3: 自動車は約2万個の部品からなるが、それぞれにも名前がある。
🐿の補足: 目の前にある「もの」の名前を挙げてみると、たしかに切りがないですね。
ちなみに、高校生が知っている言葉の数は4万から4万5千語と言われています。
第二段落: 同じ「もの」・「こと」でも言語が違うと名前(ことば)が違う。
具体例: 犬という動物は日本語では「イヌ」、中国語では「狗」、英語で「dog」、フランス語で「chien」、ドイツ語で「Hund」。
🐿の補足: 犬の鳴き声で言えば日本語では「ワンワン」ですが、中国語では「ウーウー」、英語では「バウワウ」です。
第三段落: ことばが違えば「もの」・「こと」の捉え方が変わってくる。
対比: 「もの」という存在から名前(ことば)が決まるのではなく、ことばから「もの」を決めているのではないか?
具体例: 世界の断片を認識するためにことばがあり、ことばが無ければ「もの」も「こと」も区別できない。認識が違えば見える世界も違う。
第四段落: ことばは「もの」・「こと」を定義することである。
対比: 「机」の定義は材質か?足の数か?高さか?
具体例: 「もの」を具体的な特徴から定義することはほぼできない。「机」を棚や床と区別するためには「その前で人がある程度の時間、座るか立ち止まるかして、その上で何かをする、床と離れている平面」という長い説明が必要。
第五段落(まとめ): 人間はことばで「もの」・「こと」を仮に定義している。
対比: 猿や犬は棚と机と椅子の区別はつくか?
具体例: 人間はことばによって、「もの」・「こと」を区別している。
どんな話か理解できたでしょうか?
若者言葉を考えます。いつの時代も若者は独自の言葉を作ってきました。古くは明治時代のてよだわ言葉(あたいやだわ。みてよ)、大正時代の「ごきげんよう」から、バブル時代に流行った「アッシー」「オバタリアン」、今だと「ぴえん」「まじ卍」
いつの時代も若者はこうした「若者しか使わない独自の言葉」を生み出すことで、他の世代とは違う存在なのだと自己主張をしているように思えます。言葉が先に生まれ、そこから文化が生まれました。ギャル語?もオタク語?も他の世界とは違う住み分けのために作られた言葉であり文化なのでしょう。
個人的にあまり好きな話でもないので、あっさりまとめてみました。