ネットが崩す公私の境

著者:黒崎政男

 前置き:

現代文で学ぶことは大きく分けて二つ。二項対立(論理構造)と、抽象的思考と具体例の識別です。この技術を使って文章を要約できさえすれば、人生に必要な国語力は十分です。

 現代文では今と昔、日本と海外、一般論と筆者の持論というように、対比軸をもって物事を論じています。これを二項対立といい、何と何を対比しているのか、筆者の意見の根拠は何か、論理構造を考えることが大事です。

 また、筆者は抽象的な持論を持っており、その持論を具体例で補強しています。筆者は結局何が言いたいのか。抽象的思考と具体例を識別できるようになりましょう。

 さて、今回はインターネットの話です。インターネットときたら対比対象がなんとなく想像つくのではないでしょうか。インターネットときたらもちろん「今」と「昔」の対比です。インターネットの登場によってどの分野がどんな風に変わったのか。そこに注目しながら読み解きましょう。

要約文:

第一段落: ニーチェは言った。「誰もが読むことができる事態は、書くこと、考えることを腐敗させる」

🐿の補足: …….はい。いきなり何がなにやらですね。ニーチェは19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した有名な哲学者です。その思想体系は今は置いておくとして、ニーチェがこの言葉を発した時代背景だけは頭に入れないと意味を理解できません。

 誰もが文字を読むことができる。これが当たり前になってきたのは最近の話です。そもそも印刷技術がないころ、本は贅沢品で庶民には買えません。印刷技術で本を大量生産できるようになり、庶民も勉強できるくらい暇になり始め、19世紀になって先進国の識字率がようやく50%を超えたくらい。ニーチェが生きた時代は、周りの人々が当たり前に本を読むようになりかけた時代でした。

 ニーチェはこれを危惧しました。誰もが読めるというのは裏を返せば「物事を深く考えない受け身の読み手」も増えるということです。誰かが本を書いたら大勢の人がそれを読む。愚かな大衆は自分で物事を考えないまま書いてあることを鵜呑みにするのではないか?

 本を書くというのは大勢の人に影響を与える行為です。それに慣れてしまえば、書き手側も深く考えなくなります。考えなくても簡単に読者がつきますから。ニーチェはその状況を読んだ上で、「誰もが読めるという事態は、書くこと、考えることを腐敗させる」と揶揄したわけです。


第二段落:「誰もが読むことができる」から「誰もが書くことができる」時代へ

  対比: インターネット(今)の登場による、「著者性の権威(昔)」の崩壊

 具体例: 昔は限られた人しか本を書けず、多数の読者が受動的に読んでいた。筆者はこれを「著者性の権威」と呼ぶ。しかしインターネットの登場により誰もが書き手になれるようになった。泣き寝入りしていた弱者もネットで告発して不正を正すこともあれば、匿名性を利用した個人の誹謗中傷がコミュニティや企業を崩壊させることもある。

 🐿の補足: ネットの炎上が怖い時代になりましたね。今までは会社の偉いおじさんが権力を握ってましたけど、言動に気をつけないとあっという間にネットで炎上してクビになる時代です。今や誰もが「読める」だけでなく「書ける」時代になりました。


第三段落: 「誰もが書ける」インターネットでは、質の低い情報を制限したり淘汰したりという力が働かない

  対比: 昔の紙の時代は制限されていた。

  理由: 紙の時代は情報量が多すぎると読み切れない。そのために質の高いものだけ選別して情報量を絞る必要がある。対してインターネットは検索機能を持っている。欲しい情報を一瞬で取り出せるので、情報量を絞る必要はないのだ。

 具体例: 昔は編集者による内容のチェックが厳しく、公開される情報は洗練されていた。今は考えてネットに公開するまで一瞬である。結果個人のとりとめもない思いや理解、誤解がネット上にあふれるようになってしまった。「公私の境」が崩れたのだ。

🐿の補足: twitterなんてまさにこれですね。ただの人が呟く「お腹すいた」がいいねされて共感される時代です。ニーチェが、書き手も読み手も「考えない」この時代を見たら発狂するかもしれません。。。


第四段落: 「誰もが、深く考えずとも、著者になれる」今の時代は、いったい何を腐敗させてしまうのだろうか?


どんな話か理解できたでしょうか?

 筆者の言うように、誰もが自由に書けることは決していいことばかりではありません。悪意のある誹謗中傷も湧きますし、悪意がなくとも質の低い情報は人々を苦しめるかもしれません。それでは規制を入れるべきでしょうか? 政府による規制や言葉狩りをテーマに書かれた名著として、ジョージ・オーウェルによる「1984」という小説があります。忙しい人は漫画でもよいので、読んだ上で考えてみるのも一興です。

 

 筆者は明確な答えを出さず問いかけで終わっています。現状を分析するだけで意見を述べている訳ではありません。インターネットに対していい面も悪い面も指摘して、「考える」のは読者に任せている訳です。皆さんもぜひ考えてみてくださいね。

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ネットが崩す公私の境” に対して1件のコメントがあります。

  1. shimarisu より:

    授業案:
    インターネット登場の前後の時代を比べ良い点と悪い点をそれぞれ比較してまとめよ。

  2. 匿名 より:

    筆者の立場に賛同か批判か、立ち位置を決め、根拠を持って意見を論じよ。

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