オンリー1か、ナンバー1か
著者:稲垣栄洋
前置き:
現代文で学ぶことは大きく分けて二つ。二項対立(論理構造)と、抽象的思考と具体例の識別です。この技術を使って文章を要約できさえすれば、人生に必要な国語力は十分です。
現代文では今と昔、日本と海外、一般論と筆者の持論というように、対比軸をもって物事を論じています。これを二項対立といい、何と何を対比しているのか、筆者の意見の根拠は何か、論理構造を考えることが大事です。
また、筆者は抽象的な持論を持っており、その持論を具体例で補強しています。筆者は結局何が言いたいのか。抽象的思考と具体例を識別できるようになりましょう。
今回は題名の通り、オンリー1とナンバー1をそれぞれ対比させたお話です。
要約文:
第一段落: オンリー1か、ナンバー1か、あなたはどちらの意見に賛同するだろうか? 生物の生存戦略はこの問いに明確な答えを示してくれる。
具体例: SMAPのヒット曲「世界に一つだけの花」の歌詞は次のように歌う。
「No.1にならなくてもいい もともと特別な Only one」
この歌詞からは「私たちには一人一人個性がある大切な存在である。つまりオンリー1が大切」という見方、「いやいや、そうはいっても世の中は競争社会なのだからオンリー1で満足せず、ナンバー1を目指さなくてはならない」という二つのことを考えさせられる。
🐿の補足: 筆者はこの問いに生物の生存戦略を例に答えようとしています。あなたはどちらがいいと思いますか? 次の段落に行く前に30秒考えてみてくださいね。
第二段落: 生物の世界の法則ではナンバー1しか生きられない。しかし生物は棲み分けという戦略を使い、その領域のオンリー1になることでナンバー1になっている。つまりナンバー1はオンリー1と同義なのだ。
具体例:
まず前提として生物界ではナンバー1しか生き残れません。ソ連の生態学者はガウゼの実験を行ってそれを証明しました。ゾウリムシとヒメゾウリムシという2種類のゾウリムシを一つの水槽で一緒に飼ったところ、水や餌が豊富にあるにも関わらず、最終的にはヒメゾウリムシだけが生き残り、ゾウリムシは駆逐されて滅んでしまったそうです。
しかし現実は多様な生物で溢れています。ナンバー1しか生きられないなら一種類の生物しかいないはず。
生物は「棲み分け」という戦略を使い、お互いに競争をさけているのだ。ガウゼの実験には続きがある。今度はゾウリムシとミドリゾウリムシとで同じ実験を行うと、今度は共存に成功した。お互い住む場所と餌が異なるのだ。ゾウリムシは水槽の上の方にいて大腸菌を餌とするが、ミドリゾウリムシは水槽の下の方にいて酵母菌を餌にしている。このように住む場所を変えて競い合う必要なく共存する現象を生物学では「棲み分け」と呼んでいる。
この棲み分けは場所だけではなく生活時間やライフスタイル、全てにおよぶ。競争を避けてオンリー1になることが、自然界の弱者がナンバー1として生き残る道だと示している。
第三段落: 全ての生物がナンバー1である。
自然界では全ての生物がオンリー1であり、ナンバー1である。オンリー1というのは個性ではない。その個性を生かしてナンバー1になることのできる「ポジション」のことである。どんなに小さくとも、ナンバー1を勝ち取った生物がこの自然界を埋め尽くしている。
どんな話か理解できたでしょうか?
レッドオーシャンとブルーオーシャンと、近年でも言われるようになりました。みんながやりたがる領域で何かしようとしてもナンバー1になれず淘汰されます。youtuberしかり、野球選手しかり。このサイトも一応教育×ITのEdTechというカテゴリですが、これもみんながやりたがるのでなかなかナンバー1にはなれません。血で血を洗うようなレッドオーシャンです。
自分だけのポジションが見つかれば生きていくのは楽ですが、そこまで至るのは至難の道。凡人は地道に努力するのが一番楽なんだと気付きます。ブルーオーシャンなんてナイナイ😈
ブルーオーシャンを見つけた話が映画になってます。facebookの創始者のお話です。面白いのでぜひ。