一生使える!現代文の解き方と文章力の基本

 意味のないことを教えることに嫌気がさして、教育界を脱出した元高校国語教師です。

 一般企業でエンジニアとして働いておりますが、国語教師として培った読解力や文章力が大いに役立っております。ちょうどテレワークの最中、テキストでの報連相ができないと仕事が回りません。文系大学出身でなんとかエンジニアがやれているのも、この国語力のおかげ。エンジニアになってまだ3年未満ですが、未熟ながらも国語力のおかげでご飯が食べられております。もう一度教えるならば、学校卒業後も役に立つこの国語力を教えたいです。

というわけで、この記事では大人になっても使える現代文の解き方をお伝えします。現役中高生向けに書きますが、文章術を学び直したい大人にもオススメです。

 国語をどう勉強すればよいかわからない。国語はいつもフィーリングで解いている。国語のテストはいつも違う文章が出るのだから勉強しても意味がない。そう思っている学生のみなさま。

それは間違いです。

 国語力がある人が文章を読むと、十中八九同じ箇所に注目します。無意識に国語の技術を使って文章を読んでいるのです。国語はセンスとよく言われますが、そのセンスは数学や英語と同じように訓練で高めることが可能です。文章を操る力はテストや偏差値、受験だけではなく、大学になってから書くレポート、就活時に書くエントリーシート、働き始めた時の同僚や上司に向けた報連相、ビジネスで取引先に売り込むプレゼンテーション、あらゆる場面で役にたちます。

授業で先生の話を聞いて板書を写す必要はありません。テスト前にノートを読み返して暗記する必要もありません。接続詞に印をつけたり文字数を数える必要もありません。

無駄な勉強をしないでください。

この記事一つで一人でも多くの人の文章力や読解力向上を狙えるなら、ようやく世の中の役に立てたと、教師冥利につきることができます。

文章のどこに注目すればよいのか?

 中高6年間で国語を学びますが、「評論」と言われる分野の文章には共通項が二つあります。この二つをマスターすれば、全ての分野の評論を読解可能です。問題作成者もこの二つを軸に問題を作成するので、問題作成者の意図がわかります。よって作成者が求める答えがわかりますし、わかりやすい文章作成にも繋がります。

その共通項とは何か。

二項対立具体例の区別です。

 二項対立とは二つの物事を比べることです。対比とも言います。国語の文章を読むと、ほぼ必ず、二つの物事を比べています。日本と外国、今と昔、普通の一般常識と筆者独自の考え方。ほぼ必ず、です。高校の教科書や塾の問題集、受験の過去問、数多くの文章を読みましたが、ほぼ必ず二項対立が使われております。

 よって文章を読む際にはまず、何と何を比べているのか、キーワードを考えてみてください。

 次にその対比がどう使われているかを考えましょう。その二つはどんな点で異なるのか。筆者自身はどちらを好ましく思っているのか。そしてその理由や根拠。どんなに長い文章でも、2~3行で要約できるはずです。字数制限付きの要約文を書けとは言いません。その辺の紙にささっと箇条書きでまとめてみましょう。

 二項対立と同じくらい大事なのが、具体例の区別です。筆者の主張は上の二項対立で読解できます。しかしその主張が本当に正しいのか、説得力をつけるのが具体例です。筆者の独りよがりではなく、客観的に正しいと思わせるために、筆者の主張に合う世界の事例を登場させます。

 大事なことは、具体例を程よく読み飛ばすことです。具体例を真剣に読み込んでいたら、正しい道筋を見失います。筆者の主張と具体例を分けて考えることで、文章読解はより単純になりますし、簡潔でわかりやすい文章作成に繋がります。

 この二つを踏まえて実際に文章を読んでみましょう。

実践問題

 何を何を比較しているのかを考えながら、次の文章を読んでください。

「自然な建築」テキスト

二項対立が使われていることがわかったでしょうか?

何と何を比較しているのか、自分の答えを決めたら答え合わせをしてみてください。下の余白に解答例を白文字で書いてますので、ドラッグしてみてみましょう。(スマホの場合は、文章を選択して「ユーザー辞書」を使うことで、文が浮かび上がります。

この文章では「表象」と「存在」が対比されています。

「表象」は見た目、外見、コンクリートなどなど、

「存在」は中身、本質、理由などなど、

似たような意味に置き換えて表現しても正解です。自分が二項対立を理解できたと自信を持てたら正解としてかまいません。


次に、上で挙げた二つのキーワードはどのように対比されているのでしょうか?

二つの違いは何か? 筆者はどちらを好ましく思うのか? その理由は何か?

形式は自由で構いません。綺麗な文章を目指さなくてもよいです。読み返した時に自分が理解できるかを基準に、軽くまとめてみましょう。こちらも同じく白文字で解答例を書きましたので、自分の回答を完成させたらめくってみてください。

筆者は20世紀を「表象」の時代だと批判している。見た目ばかり重視してしまい、本当に大事なところがおろそかになっていないだろうか?

似たような意味だと判断できれば、正解として構いません。


 最後に具体例の区別に挑戦してみましょう。筆者は上の持論を補強するために、どのような具体例を用いていますか?こちらも箇条書き程度で考えてみましょう。一応解答例を載せておきます。

表象の具体例としてコンクリートで作った建物や広告代理店の仕事を挙げている。コンクリートを使えばあらゆる形、色を表現できる。たとえ中身の鉄骨が腐っていても、それは外見上わからない。広告も同様だ。大した価値のない商品でも広告にお金をかけることで魅力的な商品に見せることが可能になる。

繰り返しますが、似たような意味なら正解です。完璧な正確さなど必要ありません。大筋の論理を大事にしてください。


 さて、どのような話か理解できたでしょうか? 二項対立と具体例の区別を用いることで、驚くほど単純な話になったと思います。難しそうな話でもこの二つの技術を使えば、説明に1分もかかりません。

 逆に言えばこの二つをマスターしていないと、レポートやビジネスの場でも伝えたいことが伝わらないということになります。難しい言い回しも美辞麗句も不要です。必要なのは文学的なお飾りではなく、誰にでもわかる単純明快な論理です。

 国語の勉強では、必ずこの二つを意識してください。文章のレベルにもよりますが、ほぼ必ずこの二つを軸に文章が組み立てられてますし、問題も然りです。

 自分が長い文章を書くときも同じです。いきなり文章を書き始める前に、何を伝えたいのか箇条書きでまとめてください。首尾一貫した無駄のない文章となり、伝わりやすくなります。

 余裕がある人はこの文章を読んでない他人を対象として、どんな話か説明する文章を書いてみましょう。論理的思考と文章構成力が相当あがるはずです。

一応解答例として。私が書いた文章がこちら。→  存在としての建築

蛇足 〜通常の問題を解く時のコツ〜

 目的はあくまで文章力と読解力、論理的思考力の向上なので、テストの解き方や偏差値なんて個人的にはどうでもいいと思っているのですが、蛇足として少し書こうかと。

 国語のテスト問題は、問題作成のプロが集まったら十中八九同じ箇所に目をつけて、似たような問題になります。私自身同僚とテスト問題を作ってきましたし、予備校の先生のような問題作成のプロの集まりでも同じ結論に至りました。やはり二項対立と具体例の区別を使えるかが問われます。それを踏まえて問題を読めば、問題作成者の意図が理解でき、応用が効きます。「国語の問題の答えは傍線部の近くにある」などのような小手先テクニックに頼ることもありません。

 例えばこのような問題が出たとします。

問1、テキストの第一段落にある「①コンクリートという素材と、二十世紀という時代は、相性がびったりだったのである。」という一文について、なぜこのように言えるのか理由を述べよ。

解法:

 まず注目するのは「相性がぴったりだった」という箇所です。これは「AとBがある部分で似ていた、同じだった」と言い換えて考えることができます。対比です。この場合は、コンクリートと二十世紀を対比して読み取れているかが問われる問題だと言えます。

 それではどんな点が似ているのでしょうか。例のごとく模範解答をおきますので、しばらく考えてみてください。

 まず前後の文から、二十世紀のテーマはグローバリゼーションであることがわかると思います。ここではグローバリゼーションのことを「いつでもどこでも同じものを用意できる」という意味で使っていることがわかります。具体例を述べると、マクドナルドもアメリカで生まれたのにもはやいつでもどこでも食べられますよね。それと同じです。

 一方でコンクリートも、いつでもどこでも同じものを再現することができます。場所を選ばず、簡単な技術と材料であらゆる造形を作ることが可能です。まさに「いつでもどこでも同じ建物を用意できる」というわけですね。

 両者の特徴を述べ、似ていることがわかるように記述すれば丸がもらえます。選択問題でも抜き出し問題でも考え方は同じです。

 もう一つ例題を出しましょう。

問2、テキストの第二段落にある「②コンクリートは、表象と存在の分裂を許容するのである。」という一文について、どういうことかわかりやすく説明せよ。

解法:

 どういうことか、と問われたらまず英訳問題を思い浮かべてみましょう。何やら難しい言葉を使っていますが、ゆるふわに訳すと「コンクリートは、「見た目」と「中身」が異なることを許すのだ」という意味にとれると思います。

 それを踏まえて、注目する箇所は「表象と存在」です。ずばり、今回のテーマである二項対立ですね。つまり、やはり二項対立を捉えて思考できているかが問われているわけです。コンクリートがこの二つの違いを「許す」ってどういうことでしょうか? 前後の文を参考にしながら、自分の言葉でまとめてみてください。

答え↓

 前後の文を読むと、コンクリートは中身がなんであれ、見た目を自由に変化させることが可能だとわかります。中身は無骨な鉄骨でも、綺麗な木の板、アルミ、石などを貼ることで、「それ」っぽく見せることができます。つまり中身と見た目が一致していないのです。この二項対立をうまくまとめれば「コンクリートは表面を様々な素材で加工することによって、建物の素材と外見を不一致させることを可能にするということ」のような解答が書けると思います。

 国語の良問は大抵二項対立が読み取れているかを聞いてきます。その読解の訓練さえしていれば、選択だろうが記述だろうが、作問者のほしい回答がわかるというわけです。

 問題集、テスト、模試を解く時、この解法を思い出して使ってみてください。

最後に

 社会人になっても英語を学ぶように、国語も学び直せたらいいなと思い、この記事を書きました。受験を卒業した大人が、効率よく国語の力を身につけるには、そして楽しみながら学ぶにはどのようなコンテンツにすればよいのか。まだまだコンテンツを模索中です。面白い文章、過去問、小論文の題材などなど、教えていただけるととても嬉しいです。

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