「間」の感覚

著者:高階秀爾

 前置き:

現代文で学ぶことは大きく分けて二つ。二項対立(論理構造)と、抽象的思考と具体例の識別です。この技術を使って文章を要約できさえすれば、人生に必要な国語力は十分です。

 現代文では今と昔、日本と海外、一般論と筆者の持論というように、対比軸をもって物事を論じています。これを二項対立といい、何と何を対比しているのか、筆者の意見の根拠は何か、論理構造を考えることが大事です。

 また、筆者は抽象的な持論を持っており、その持論を具体例で補強しています。筆者は結局何が言いたいのか。抽象的思考と具体例を識別できるようになりましょう。

 さて、今回は「水の東西」と同じくらい二項対立が取りやすい「間」の感覚です。

日本と西洋の違いを対比しています。具体例から二つを比べながら、そこにどんな思想や習慣がひそんでいるのかを論じるという、評論として大変オーソドックスな内容になっています。二項対立の練習として最適ですね。

要約文:

第一段落: 日本とヨーロッパの違いは、住居の構造や空間構成といった目に見えるものだけでなく、日常の生活様式や行動規範にそのまま反映されている。

  対比: 日本の考え方、ヨーロッパの考え方

 具体例: 

1、花の愛し方。ヨーロッパでは花瓶に生ける切り花として花を愛するが、日本では花見や紅葉狩りのように自然そのまま愛することを好む。

2、絵画史。ヨーロッパの名画を見ると町全体の眺めや教会、広場といった人工のモニュメントが題材となるが、日本の名画を見ると、桜や梅、花菖蒲など、自然の情景が題材として好まれているようだ。

3、建築。ヨーロッパでは外と内を物理的な壁で分ける。一方で日本は中間領域のような場所を作ることで、自然に内部から外部へと繋がる構造になっている。(軒下やぬれ縁、渡り廊下などが中間領域の例)。


第二段落: ところが、中間領域のような内部と外部をわけない住居に住んでおきながら、日本人は内と外を厳しく区別するという行動様式を示す。

 具体例: 住居内では靴を脱ぐという習慣。スリッパで畳の部屋に入らない。便所では専用のスリッパに履き替える。などなど、行動としては明確に区別しているのである。


第三段落: このような区別は物理的というより心理的な区別であり、価値観の問題である。

 具体例: ヨーロッパでは壁で物理的に空間を区別する。しかし日本では鳥居や関守石のように、その気になれば簡単にまたげるもので空間を区別する。


第四段落: このように意識的な区別する関係性の広がりを、「間」という言葉で呼んだ。間とは「空間」「客間」のように空間の広がりでもあり、「昼間」「晴れ間」のように時間的広がりでもあり、「仲間」のように人間関係の広がりでもある。「間合い「を見定めることが日本人の行動様式の原理であり、読み違えると「間が悪い」ことになり「間違い」を犯す。この「間」の感覚はまだ日本人の間に生き続けており、住居の構造を規定し、美意識や倫理とも結びつく。この構造の解明が日本文化を理解することにつながるのだ。

🐿の補足: ????という感覚になる評論ですね。最初の花や絵の具体例で自然の話かな?と思いきや、住居の「ウチとソト」に話が飛び、最後に「間」というよくわからんワードが飛び出すという、「結局何がいいたいの?」と突っ込みたくなるお話です。

 特に最後の「間」の話。結局「間」とはなんでしょうか? はっきり定義もしてくれないし、説明も足りない。しかし筆者はこの「間」こそが大事で、これを解明すれば日本文化が理解できると力説している。「間」の説明にもっとページを割いて細かく説明してほしいものです。

 ということでこの「間」の感覚を外国人に説明することを想定して🐿が言語化してみました。

「間」とは関係性であると定義してみます。例えば日本人の部屋はくるくると役割が変わります。布団を敷くことにより寝室。ちゃぶ台を置いて家族が揃うとそこはリビング。お客様がくると客間。部屋そのものではなく、人や道具の関係性で役割が決まるんですね。

 人間関係も同じです。私個人という人格で私の振る舞いがきまるのではなく、そこに誰がいるのか、人間関係の「間」で私の振る舞いが決まります。「空気を読む」とも言い換えましょうか。本文中に「鳥居や関守石は物理的にはなんの障害にもならない。障害になるには鳥居の意味についての共通の理解を持つ集団が必要になる」とありますが、その場にいる人々が共通して「カラスは白い」と決めたらカラスは白くなるのです。

 物理的な境界ではなく、心理的な境界を作る。それをその場にいる集団で共有する。それが「間」の感覚です。「結界」みたいですね。


どんな話か理解できたでしょうか?

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