新しい地図を描け
著者:中沢新一
前置き:
現代文で学ぶことは大きく分けて二つ。二項対立(論理構造)と、抽象的思考と具体例の識別です。この技術を使って文章を要約できさえすれば、人生に必要な国語力は十分です。
現代文では今と昔、日本と海外、一般論と筆者の持論というように、対比軸をもって物事を論じています。これを二項対立といい、何と何を対比しているのか、筆者の意見の根拠は何か、論理構造を考えることが大事です。
また、筆者は抽象的な持論を持っており、その持論を具体例で補強しています。筆者は結局何が言いたいのか。抽象的思考と具体例を識別できるようになりましょう。
さて、一番初めの文章なので、シンプルな主張であり、易しめの文章です。何と何を比べているのかを見つける練習問題と考えて取り組みましょう。
要約文:
第一段落: 筆者は普通の地図も好きだが、動植物の生態など、「人間以外の視点で見た地図」が好きだ。
対比: 「普通の人間が使う実用的な地図」と「動植物の生態など人間以外の視点で見た地図」
具体例: 航海や商業、戦争のために役に立つ地図が普通の実用的な地図であり、動植物の生態を分ける「ウォーレス線」が描き込まれたり、更に言えば、広葉樹林が捉えている世界の構造や渡り鳥の頭脳に入っている飛行のための地図などが、人間以外の視点で見た地図となる。
十九世紀は地球の探検が終わった時代であった。すでに地球は何周も航海され尽くし、人のいない山もジャングルもどんどん少なくなっていった。それに伴い精巧な地図も何種類も作られていった。そんな時代に博物学者たちは、新しいタイプの地図を作り、同じ空間を別の光景に作り変えたのだ。
🐿の補足: 本文中では人間と、人間以外の動植物とで分けていますが、人によっても全く異なる地図ができると思います。外国人が日本を訪れた時、日本人には全くない発想の感想が出てきます。また、都会に住む人が田舎に行くと、田舎の人にはなんでもない風景が、都会の人には宝物のように映るかもしれません。見ているものが違うと、地図もガラリと変わるのです。同じ空間なのに、それぞれの視点を持つと、全く別の光景が見えてくるのです。筆者はこれを「探検の芸術化」と表現しました。
第二段落: 現代の僕たちはまだまだ地球のことを知り抜いていない。世界が貧弱で味のないものに見えるのは、僕たちがただ一種類の地図の書き方しか知らないからだ。世界を変えるには、新しい地図を描ける意識を持たなければならない。芸術、科学、哲学でもこの考え方が重要になってくる。
どんな話か理解できたでしょうか。
🐿も思春期だった時代がありますが、当時は世界が貧弱でつまらなかったですねーw。このままつまらない人生を送るんだなと哀愁ただよう高校生でした(笑)。世界が面白くなり始めたのは、大学に入ってから、それから働き始めてからです。自分で動いて人と話し、色んな視点を手に入れて初めて、世界の面白さに気づけました。
個人的にはさっさと学校を飛び出して興味が湧いてから勉強すればいいんじゃないかと思っているんですけど、まあ人それぞれですね。今楽しくなくてもいつか楽しめますよん。
ちなみに教科書は違いますが、別会社の教科書会社が似たような話を採用しています。興味があればこちらもどうぞ。